アレルギー性結膜炎、特にアトピー性皮膚炎に伴うアレルギーは、長くにわたる治療が必要となります。特効薬や一回受ければ一生再発しないという治療、どこでもやっていないような特殊な治療を求めて医療機関を転々とする方も多いのですが、基本はアレルギーの原因を知り、重症時にはステロイドを使用し、落ち着いている時には抗アレルギー剤や保湿剤で経過を見る、ということになります。
ステロイド剤を使用しているときには定期的な診察が必要となりますが、症状がひどくないときにはステロイド以外の薬を出して診察期間をあけられるようにしています。重症アレルギーの患者さんは、学校や仕事がある年代の方が多いためです。遠方からの患者さんの場合には、診療方針が決まった時点で地元に戻れるように、と考えています。
アレルギー性結膜炎の症状が「かゆみ」というのはよく知られています。アレルギーの原因物質は涙で流され鼻側にある涙点から鼻に排出されるため、目頭だけがかゆくなることもあります。
アレルギーの原因による症状のちがいはないのですが、かゆみがはっきりせず、「ゴロゴロする」「目が重い」という症状だけの場合もあります。コンタクトレンズが原因の場合、レンズが汚れる、ずれる、という症状のこともあります。 アレルギー性結膜炎の症状は目の痛み、充血、目やに、涙目、目が乾く、といったドライアイとまったく同じ症状のことも多く、区別がつかない、あるいはドライアイとアレルギー性結膜炎の両方がある、という場合もあります。
(1) 花粉症 (季節性アレルギー性結膜炎)
花粉が原因で生じるアレルギーです。スギ花粉症が代表的ですが、秋に飛ぶ花粉に反応を起こす場合もあるので、秋にも花粉症はあります。花粉症では、毎年決まった季節に症状がみられることが特徴です。
(2) ハウスダストによるアレルギー性結膜炎(通年性アレルギー性結膜炎)
ハウスダストによる結膜炎も症状は花粉症と同様です。ハウスダストは常に身の回りにあるので、一年を通して症状がみられるのが特徴です。ハウスダストに反応するのであれば家の中にホコリがたまりにくい対策を考える必要があります。
(3) 春季カタル
春に悪化する慢性重症型のアレルギー性結膜炎です。10歳くらいまでの男児に多く見られますが、成人でも治療が必要な状態が続いている方もいます。
上眼瞼結膜に石垣状の乳頭が見られる「眼瞼型」と角膜輪部(黒目と白目の境目)にもりあがる病変が見られる「輪部型」があります。
炎症が強いときに、角膜(黒目)に傷ができ、重症の場合視力低下にもつながります。
一昔前まではステロイド剤点眼の治療が主体だったのですが、免疫抑制剤の点眼が処方できるようになってきた現在ではステロイドは悪化したときに追加する、という考えになってきています。
(4)巨大乳頭結膜炎
コンタクトレンズなどの異物による反応で起きるアレルギーです。コンタクトレンズの定期検査の時に上まぶたをひっくり返すのはこのチェックのためです。かゆみを感じていないことも多く、「レンズが汚れる」「ゴロゴロする」という症状だけのこともあります。
(5)アトピー性角結膜炎
アトピー性皮膚炎に伴うアレルギー性結膜炎です。重症の場合ステロイド剤の点眼・軟膏、時に免疫抑制剤の点眼を使うため、眼科での診療をおすすめします。
スギ花粉症のように季節がはっきりしていて、鼻の症状もある場合にはすぐ診断がつきます。が、一年中かゆみが出る場合はコンタクトレンズの不調、ドライアイということもあります。
逆にアレルギー性結膜炎であっても、「かゆみ」を感じずに、なんとなく目の調子が悪い、という場合もあります。
ドライアイやアレルギー性結膜炎は目の表面の病気で、いっしょに起きている場合も多く見られます。症状やコンタクトレンズ使用などの生活習慣を詳しく聞き出し、眼科の専門的な診察によりほとんどが診断はつきますが、涙や血液検査で確定診断をつけることが必要な場合もあります。
この二つの写真は別の方のアレルギー性結膜炎と流行性角結膜炎(ウイルスによるうつりやすい「はやり目」)ですが、どちらも症状は「かゆくてゴロゴロする。目やにが出る。」という訴えでした。
アレルギー性結膜炎の場合には涙でチェックするアレルウォッチ、はやり目の場合にはウイルスをチェックするキット(数社の製品あり。)で、確定診断をつけることが可能です。どちらも10-15分程度で終わる検査です。ウイルス性結膜炎であれば休まなくてはならない場合もありますが、アレルギーと確定診断がつけば安心して登校・通勤ができます。
アレルウォッチでアレルギー性結膜炎の診断はつきますが、何にアレルギーを起こしているのかはわかりません。原因を知るのには採血検査をおすすめしています。自分がどのようなものにアレルギーの反応を起こすかを検査により知ることで様々な対策を講じることが可能になります。たとえばスギ花粉に対してアレルギーがある場合には季節前に予防的な治療ができます。アレルギー検査は平日午後5時半までの受診であれば予約不要でが、土曜は前日までに予約をお願いします。平日も遅くなりそうなときは連絡してください。(検査会社に外注しているためです。) (小学生でも採血がしやすい、協力が得られるお子さんであれば採血可能ですが、基本中学生以上が対象です。)
希望者には結果を郵送しています。
「アレルギー採血」
採血管1本(9ml)の採血により、アレルギーの原因を判定します。3割負担の方で検査代金は5000円程度です。結果がわかるまで数日かかります。現在当院でアレルギー性結膜炎・鼻炎の方にお勧めしているセットは「Viewアレルギー39」です。
項目は以下の表のようになります。
結果はこのような報告書です。
1 アレルギーの原因(抗原)を避ける
原因がなければ症状は起きないので、まず行う方法です。なにがアレルギーの原因なのかを調べ、スギなどの花粉であれば、多く飛散している日には外出を避ける、ゴーグルやマスクで防ぐ、などの工夫をします。ハウスダストの場合には、じゅうたん敷きをやめ、掃除、抗ダニ加工寝具使用をおすすめします。
2 人工涙液点眼
原因が目の中に入ってアレルギー症状が起きるので、防腐剤の入っていない人工涙液点眼(ソフトサンティア、ロートソフトワン)を洗い流すように使います。ウェルウォッシュアイという点眼型洗眼薬も市販されています。防腐剤の入っている点眼をたくさんさすことや水道水による洗眼は、目の表面に傷をつけてしまうのでおすすめできません。市販の目洗いカップはまぶたの皮膚も洗うことになり、特にアトピー性皮膚炎のある方にはお勧めしていません。
3 抗ヒスタミン薬点眼
マスト細胞から出されるヒスタミンにより、かゆみや充血がおきますが、抗ヒスタミン薬はこの反応をおさえます。点眼薬ではリボスチン、パタノール、アレジオンがあります。
4 ステロイド剤点眼
以上の治療方法でもかゆみがおさまらない、あるいは角膜に傷ができる、などの症状が強い場合にステロイド点眼を追加します。フルメトロン点眼が代表的なものです。また、アトピー性皮膚炎がある場合にはまぶたもステロイド剤軟膏を使って治療します。 ステロイドは非常に効果のある薬ですが、「諸刃の剣」とも呼ばれるように、その副作用については常に注意する必要があります。
5 コンタクトレンズによるアレルギーの場合
レンズ使用を中止するのが一番ですが、どうしても使わなくてはならない場合ワンデータイプをおすすめします。ハードコンタクトレンズはアレルギーを起こしにくいのですが、まったく起こさないわけではありません。
6 軟こう
アトピーの皮膚症状が重症の場合、まぶたの皮膚の治療も行わないと目のかゆみが治らないことが多く見られます。ステロイド剤軟膏や、免疫抑制剤の軟膏を使って治療します。
7 免疫抑制剤の点眼
免疫抑制剤の点眼はパピロックミニとタリムスがあり、春季カタルの治療に使われます。パピロックは春季カタルの輪部型、タリムスはアトピー性皮膚炎が合併している春季カタルに効果があるとされています。
他院で免疫抑制剤の点眼が処方されずになかなか治らない、と相談にいらっしゃる方が多いのですが、この薬は保険適用がありどこでも処方できるものです。免疫抑制剤が「怖い」と言われることがありますが、ステロイド剤による副作用の眼圧上昇が免疫抑制剤にはありません。
*薬によるアレルギー
時に治療のために出された薬で具合の悪くなることがあります。
写真はアレルギー用の点眼で悪化した例です。
結膜炎症状とまぶたは血がにじむような炎症があります。 原因と思われる点眼を中止してもらい改善しました。